【けんぶん録】 第6回 加工時間短縮と生産効率
前回(第5回)は、『切粉』の問題についてでした。
今回は、『加工時間短縮と生産効率』についてです。
私は、都立の工業高校を卒業(1965年S40)と同時に某工作機械メーカー(タレット旋盤メーカー)へ就職しました。
当時、学校では、一台のモーターから段車とベルト駆動により、工場内の多数台の機械へ動力を伝達、ベルト駆動で旋盤を稼動させていました。
現在は、多工程(旋削・ミーリング・フライス・穴あけ・エンドミル加工及び1工程2工程を1台のマシンに集約した複合加工機となっています。
旋盤実習は、万力(バイス)の部品を旋盤で加工(ネジきり含む)する実習でした。
当時は、工具鋼が主体で加工速度は、周速10m/min程度と記憶しています。
高速度鋼(ハイスピード鋼=ハイス)で3倍の25~30m/min。
超硬工具(タングステンカーバイト=WC)で約3倍の90~120m/min。
このころから現在のような、クォリフォイドバイト(チップ交換式バイト)が主流となってきました。
サーメット コーティング 3倍の250~400m/min。
CBN工具により更に3倍の1,000~3,000m/min。
別表をご覧下さい。
切削速度の変化
(クリックするとPDFでご覧いただけます)
先日(6月20日~24日)DMG森精機 IGA Innovation 2017の展示会に参加いたしました。自動化・5軸加工機・ハイブリッド加工機と高効率生産に対応した華やかな「世界最大のIGAショールーム」「最新鋭約60台展示」10社以上のパートナー企業の出展・・・・とありました。
確かにエルゴノミクスデザイン(人間工学に基づいた機械設計)等により機械接近性・操作性など使いの良さは理解できます。
しかし、空洞化により国内生産は、多品種少量生産が主体となり、今までのように単体機を並べ工程分割をした効率的なタクト生産から、分割した加工工程を集約することで工程待ち時間等、高効率な複合化加工機に変わりつつあります。
政府もIT技術(IoT)を取り入れることで、
①生産のリードタイムの短縮
②仕掛品の減少
③運転資金のミニマム化
など等、加工工程の待ち時間などトータルの生産効率向上を目指す後押しもしています(助成金)。
他方、OECD先進7カ国の中で、日本の労働生産性が最低と言われています。
政府も「働き方改革」を進める一方、電通事件以来、残業規制強化で働き方にも変化を感じています。
この事は、結果として労働生産性の引き上げに繋がればよいのですが、中々難しい問題です。しかし自分自身で解決しなくてはならない問題でも有ります。
労働生産性 = 総利益 ÷ 従業員数 ⇒ 総利益 = 売上 - 経費
この事は、「売上を伸ばす」か「経費を下げる」ことで、「利益」が確保されると言うことになります。
このデフレ景気の中での売上確保は至難の業、かといって経費 = 賃金を下げる事は、有能な人材の確保が難しくなるということで、どちらの選択も大変厳しい結果となります。残された道は、自主改善ということになります。
旋盤系の多品種少量生産でいかに生産効率を上げるかは、複合加工機を新規設備すれば可能性はありますが、資金力・人材が必要であり、解決ではありません。
特に、旋盤系の段取り換えは、製品が変わるその都度「爪交換 爪再成形加工」を必要となるため、段取り時間の短縮は進んでいないのが現状です。
生産効率を阻害する要因は、
① 爪交換と
②爪の再成形加工が問題で特に
③自動化・無人化が難しいと言うことです。
シンセテックは、旋盤系の多品種少量生産の高効率生産に注目し、「APSチャックとクイック爪」を商品化いたしました。
次回は、「人手不足と高効率生産」についてです。